
目次
「抜歯した当日にインプラントを入れられる」と聞くと、通院の回数も期間も短くて済むように思えます。実際、条件が合えばそのとおりです。ただ、この方法はどなたにでも適応できるものではありません。ご相談の場でも、まずここを正確にお伝えするようにしています。
一般に「ワンデイインプラント」「1Dayインプラント」と呼ばれるのは、歯を抜いたその日に人工歯根を埋める方法で、専門的には抜歯即時埋入といいます。当院では日常的に行っている方法ですが、骨や歯ぐきの状態によっては、あえて待ってから埋めたほうが結果がよくなる場合もあります。
この記事では、抜歯即時埋入の仕組み、適応になる条件とならない条件、当日の流れ、そして費用と期間の目安までを、京都・聖護院でインプラント治療を担当している立場からご説明します。
この記事のポイント
- 抜歯即時埋入は、抜歯と同時に人工歯根を埋める方法。通院回数と治療期間を短縮できます
- 適応の分かれ目は、抜いた部分に感染がないこと、人工歯根を支える骨が残っていること
- 当日に仮歯まで入るかどうかは別の話です。当院では前歯など見た目に関わる部位を中心に対応しています
- 費用は当院で1本44万円(税込・自由診療)。通院は5〜7回程度が目安です
- 適応外の場合でも、待ってから埋入する、骨造成を併用するなどの方法があります
結論:条件が合えば有効。ただし全員には適応できません
歯を失う原因はさまざまですが、抜歯が必要になった段階では、その周囲の骨や歯ぐきはまだ形が保たれていることが多くあります。抜歯即時埋入は、その形が崩れる前に人工歯根を入れてしまう考え方です。
抜歯した部分の骨は、そのままにしておくと数か月かけて吸収され、幅も高さも痩せていきます。骨が痩せてから埋入しようとすると、骨造成という追加の処置が必要になり、費用も期間も増えます。抜歯即時埋入には、この吸収をある程度抑えられるという利点があります。
一方で、抜歯の原因が重度の感染(歯周病や根の先の病巣)である場合、その場所にすぐ人工歯根を入れると、結合しないリスクが上がります。適応かどうかを決めるのは、患者さんのご希望ではなく、骨と感染の状態です。

適応になる条件・ならない条件
診査で確認しているのは、おおむね次の点です。
| 適応になりやすい | 適応が難しい |
|---|---|
| 抜歯する部分に強い感染がない | 根の先や歯ぐきに膿を伴う感染がある |
| 人工歯根を固定できる骨が残っている | 骨が大きく失われている、薄い |
| 全身の状態が安定している | 糖尿病などのコントロールが不十分 |
| 喫煙していない、または本数を減らせる | 喫煙量が多く、治癒に影響が見込まれる |
| 噛み合わせの力が過度に集中していない | 強い食いしばり・歯ぎしりがある |
これらはCTでの精密検査と、実際に抜歯したあとの骨の状態を見て判断します。計画では即時埋入の予定でも、抜歯後に骨の欠損が想定より大きければ、その場で方針を変えることがあります。ご相談の段階で「必ず当日に入れます」とお約束できないのは、このためです。
「当日に埋入する」と「当日に歯が入る」は別のことです
抜歯即時埋入は、あくまで人工歯根を骨に埋める処置です。その上に見える歯(仮歯)が当日に入るかどうかは、埋入した人工歯根がその場でどれだけ安定しているかで決まります。当院では、前歯など見た目に関わる部位を中心に、条件が合えば当日に仮歯をお入れしています。奥歯の場合は、噛む力の影響を避けるため、結合を待ってから進めることが多くなります。
当日の流れ
抜歯即時埋入を行う日の流れは、おおよそ次のとおりです。
- 麻酔:表面麻酔をしてから局所麻酔を行います
- 抜歯:周囲の骨をできるだけ傷つけないよう、歯を分割して取り出すことがあります
- 抜いた部分の清掃と確認:感染した組織を取り除き、骨の残り方を直接確認します
- 埋入:CTデータから作成したサージカルガイドを用い、計画した位置・角度・深さに人工歯根を埋めます
- すき間の処置:人工歯根と骨のあいだにすき間があれば、骨補填材で補います
- 仮歯または縫合:条件が合えば仮歯を装着します。難しい場合は縫合して治癒を待ちます
所要時間は1本であればおおむね1時間前後です。当院ではCTデータをもとにサージカルガイドを作成し、適応する症例では歯ぐきを大きく切開しないフラップレスでの手術にも対応しています。切開が小さいほど、術後の腫れや痛みは軽くなる傾向があります。
なお、**当院では静脈内鎮静法や笑気吸入鎮静は行っておりません。**痛みへの対応は表面麻酔と局所麻酔の範囲で行い、麻酔が効いていることを確認してから処置に入ります。

「当日に噛める」とは、どこまでのことか
抜歯即時埋入とあわせて語られるのが即時荷重です。埋入した人工歯根にその日のうちに仮歯を装着し、噛む機能をある程度回復させる方法を指します。「抜歯当日にインプラント」と検索される方の多くは、この状態を想像されていると思います。
正確にお伝えすると、当日に入るのは仮歯であり、最終的な人工歯ではありません。仮歯の役割は見た目と発音の回復が中心で、硬いものをしっかり噛むための強度は持たせていません。人工歯根が骨と結合するまでのあいだは、仮歯の部分で強く噛まないようにお願いしています。柔らかい食事であれば当日から召し上がれることが多いものの、これも埋入時の安定度によります。
適応は限られます。埋入した人工歯根がその場で十分に安定していること、噛み合わせの力が集中しない位置であることが条件です。当院では前歯など見た目に関わる部位を中心に対応しており、奥歯では結合を待ってから進めることが多くなります。
術後の過ごし方|当日から1週間
手術そのものと同じくらい、その後の数日が結果を左右します。とくに抜歯即時埋入では、埋めた人工歯根が骨と結合し始める大切な時期にあたります。
当日:麻酔が切れるまでは食事や熱いものを避けてください。強くうがいをすると、傷口を保護している血のかたまりが流れてしまうことがあります。当日の入浴は湯船につからず、シャワー程度にしてください。飲酒と喫煙は控えていただきます。
翌日から3日ほど:腫れや内出血が出ることがありますが、多くは数日で落ち着きます。歯みがきは、手術した部位を避けて普段どおり行ってください。処方した薬は指示どおりに飲み切ってください。
1週間ほど:激しい運動、長時間の入浴、飲酒は控えてください。仮歯が入っている場合は、その部分で硬いものを噛まないようにお願いしています。仮歯は最終的な人工歯とは強度が違い、噛む力に耐えるためのものではありません。
腫れが日ごとに強くなる、痛みが増していく、仮歯がぐらつくといった変化があれば、次の予約を待たずにご連絡ください。早い段階であれば対応できることがほとんどです。
抜歯してから待つ方法と、どちらがよいのか
抜歯即時埋入が向いている方もいれば、待ってから埋入したほうがよい方もいます。判断の材料を整理すると次のようになります。
| 抜歯即時埋入 | 抜歯後に待ってから埋入 | |
|---|---|---|
| 手術の回数 | 1回にまとめられる | 抜歯と埋入で2回 |
| 治療期間 | 短くなりやすい | 抜歯後の治癒を待つ分、長くなる |
| 骨の吸収 | 抑えやすい | 進んだ場合は骨造成が必要になることがある |
| 適応 | 感染がなく骨が残っている場合 | 感染がある場合も、治まってから対応できる |
「早く終わること」だけを基準にすると、判断を誤ります。感染がある状態で無理に埋入して結合しなければ、やり直しとなり、結局は時間も費用も余計にかかります。
費用・期間・リスクについて(自由診療)
ワンデイインプラント(抜歯即時埋入)に関する費用・期間・通院回数・リスク
- 自由診療である旨:インプラントは公的医療保険が適用されない自由診療です
- 治療内容:抜歯と同時に人工歯根を埋入し、条件が合えば当日に仮歯を装着します。結合を待って最終的な人工歯を装着します
- 標準的な費用:当院では1本44万円(税込)です。精密検査・診断、人工歯根、手術、アバットメント、上部構造を含みます。骨造成などの追加処置が必要な場合は別途費用がかかります。前歯など審美領域は50万円台となります
- 治療期間・通院回数の目安:診査・診断から人工歯の装着まで、おおむね3〜5か月。通院は5〜7回程度です(骨造成を併用する場合はおおむね4〜8か月・6〜9回程度)
- 治療後の通院:半年に一度(年2回)の定期メンテナンス。保険診療の範囲で行い、3割負担の方で1回あたり数千円程度です
- 保証:10年以内は100%保証(再手術・代替治療の費用はいただきません)、11年目以降は30%の部分保証となり、合わせて20年ロング保証です。半年に一度のメンテナンスの受診が条件です
- 主なリスク・副作用:手術後の痛み・腫れ・内出血、細菌感染、インプラントが骨と結合しない場合があること、噛み合わせの不調、インプラント周囲炎による動揺や脱落、仮歯の破損。糖尿病などの全身疾患や喫煙は治癒に影響することがあります。骨や感染の状態によっては適応外となり、待ってから埋入する方針に変更する場合があります
費用の考え方はインプラントの費用はなぜ医院で違う?、骨が足りない場合の選択肢は「骨が少ない」「他院で断られた」方へでご説明しています。
よくある質問
Q. 抜歯した当日に、必ずインプラントを入れられますか?
A. お約束はできません。抜歯してみて骨の欠損が想定より大きい場合や、感染が残っている場合は、その場で方針を変えて治癒を待つことがあります。CTでの精密検査で事前にある程度は判断できますが、最終的には抜歯後の状態を確認して決めます。
Q. 当日に歯が入らないと、しばらく歯のない状態で過ごすのですか?
A. 前歯など見た目に関わる部位では、当日に仮歯をお入れするか、別の方法で見た目を保つ対応をします。奥歯の場合も、ご希望と状態に応じてご相談ください。
Q. 抜歯した当日から噛めるようになりますか?
A. 条件が合えば当日に仮歯が入り、柔らかい食事であれば召し上がれることがあります。ただし仮歯は見た目と発音を保つためのもので、硬いものを噛む強度はありません。しっかり噛めるようになるのは、結合を待って最終的な人工歯を装着してからです。
Q. 手術中や手術後は痛みますか?
A. 手術中は麻酔が効いた状態で行いますので、痛みを感じにくい状態で進みます。麻酔が切れたあとに痛みや腫れが出ることはありますので、痛み止めをお出しします。腫れは数日で落ち着くことが多いですが、個人差があります。
Q. 仕事は休まないといけませんか?
A. 当日は安静にしていただくほうが安心です。翌日以降は通常どおり過ごせる方が多いものの、激しい運動や飲酒は数日控えていただきます。
Q. 費用は通常のインプラントと変わりますか?
A. 当院では1本44万円(税込)で、抜歯即時埋入でも同じです。骨補填材の使用や骨造成が必要な場合は別途費用がかかります。
Q. 他院で「抜いてから半年待つ」と言われました。当院なら当日できますか?
A. 診査の結果によります。待つ判断が適切な状態であれば、当院でも同じようにご説明します。CTデータをお持ちいただければ、なぜ待つ必要があるのかも含めてご説明できます。セカンドオピニオンとしてのご相談も承っています。
まとめ
- 抜歯即時埋入は、抜歯と同時に人工歯根を埋める方法。骨の吸収を抑えやすく、期間を短縮できます
- 適応の分かれ目は、感染の有無と、人工歯根を支える骨が残っているか
- 当日に仮歯が入るかは別の判断。当院では前歯など審美部位を中心に対応しています
- 費用は1本44万円(税込)、通院5〜7回程度が目安
- 適応外でも、待ってから埋入する、骨造成を併用するなどの方法があります
抜歯が必要と言われた段階でご相談いただくほど、選べる方法は広がります。当院の無料相談では、CT撮影までを無料で行い、その日のうちに現状と選択肢をご説明しています。

監修:八木 龍
聖護院やぎ歯科・矯正歯科 院長
OSSTEM IMPLANT 公認ディレクター / 国際口腔インプラント学会 所属 / 抜歯即時埋入・審美領域のインプラントに対応 / 全国の歯科医師向けにインプラント講師
広島大学歯学部を卒業後、大阪市の歯科医院インプラントセンターで副院長を務め、2020年に聖護院やぎ歯科・矯正歯科を開院。抜歯即時埋入や審美領域の難症例を含むインプラント治療に取り組み、診査・診断にもとづいて、身体的・経済的なご負担に配慮した治療計画を大切にしています。




